明智光秀 第七章

watanabe

信長を守るため、光秀・秀吉らの戦いが始まった。
殿軍総大将として秀吉が采配を振るう。
敵はすでに目前にまで近づいてきていた。
夜の戦場に秀吉の声が高く響く。「鉄砲隊、撃てー!」
わずかな手勢に鉄砲を持たせて、朝倉軍に向けて撃つ。
ゆっくりと後退してはまた打ち放つ。これの繰り返しで、
少しずつ時間を稼いでいた。しかし数の差がありすぎている。
朝倉軍が少しずつ距離を縮めてくる。
(我が命もここまでやも知れぬな・・。)光秀を初め、
誰もがそう思った。そのときであった。「・・・む?
この音は何だ・・?」光秀は辺りを見回した。何処からか、
馬や人の足音が聞こえてくる。軍勢が
こちらに近づいて来ていることは間違いなかった。
「もう敵の本隊がきたんか・・。」秀吉はその音を聞いて、
生還する望みを完全に捨てた。敵本隊の大軍が来れば、
少数の殿軍が敗れることは目に見えている。だが、
向かってきているのは意外な軍勢であった。
・・軍勢の姿が見えた。「あれは・・、紛れもなく、
三つ葉葵の紋・・。殿、徳川殿の援軍でございますぞ!」
秀吉配下の将・山内一豊が、向かってくる軍勢を見て
嬉しそうに叫んだ。「徳川殿が・・?」一豊とは逆に、
秀吉は不s思議そうに言った。なぜなら、
徳川軍は信長の命で退却したはずであったからだ。
「徳川殿、何故こちらに?」秀吉は馬にまたがる家康を見て、
また不思議そうに聞いた。家康は「織田殿の将達から
秀吉殿らのことをお聞きし、冥土への旅は少しより
大勢の方が寂しくなかろうと思いましてな。」と、
若いのに老成した口ぶりで答えた。秀吉は、
まぁそれもいいかなと思いながらも、
「それはかたじけない。」と厚く礼を述べた。
だが徳川軍の兵士達の力は、
殿軍の予想を上回るものだった。
辛苦を重ねてきた三河武士である。何度も何度も、
敵を押し返した。「強い・・。これが、三河武士か・・。」
光秀は徳川勢に驚くばかりであった。
光秀は今まで多くの軍を見てきたが、
三河武士の実力は今まで見た軍の中でも
圧倒的に強かった。徳川軍の加勢もあり、
殿軍は次第に敵を圧倒していった。
最後は決死の突撃を行う予定であったが、急遽取りやめ、
撤退することにした。こうして織田軍は辛うじて
敵の追撃から逃れた。無事京へ戻った信長は、
秀吉の功績を称え、彼に黄金数十枚を渡した。
信長は無事に戻れたのが嬉しかった。だがその反面、
自分を危機に陥れた浅井と朝倉に大きな怒りを覚えた。
「浅井、朝倉・・!この信長を怒らせたこと、後悔させてやろう・・!」
光秀は信長の怒り様を見て、
(何とか長政殿とお市の方様を助けることはできぬものか・・。)
と考えていた。背後に足利義昭があることが
わかっているからである。だが光秀の思いむなしく、
浅井・朝倉はここから滅亡への道を進むのであった・・。
(明智光秀 第八章に続く)





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