明智光秀 第五章

watanabe

光秀はしだいに信長から認められつつあった。
だが将軍義昭は、信長に不満を持っていた。
殿中御掟という九箇条の掟書を突きつけられ
認めさせられるなど、いいように使われていたからである。
我慢がならない義昭は、とうとう決意した。
「信長め、将軍である私を操り人形のように使いおって・・。
この義昭こそ、天下人なる者ぞ!
逆賊・信長めを成敗してくれる!」と、
本願寺顕如・武田信玄・上杉謙信・毛利元就・朝倉義景や、
さらに義弟浅井長政らに信長討伐令を下したのである。
これで義昭と信長の対立は決定的なものとなっていった。
これを聞いた光秀はすぐさまに義昭の元へと向かった。
そして問いた。「義昭様、なぜ信長様に刃向けるのです?!
信長様は義昭様を将軍職につけてくださったお方です!
そのご恩をお忘れか!」「信長は将軍であるこの私を操り、
天下を我が物にしようとしておる!
誅されるのは当然のことじゃ!」光秀はなおも問いた。
「だからと言って信長様の義理の弟である浅井長政殿まで
巻き込むとは!長政殿の人を思いやる優しき心、
それを操ろうとしている義昭様も、
信長様とやることが同じではありませぬか!」光秀の言う通り、
浅井長政は優しい性格だった。だから家来にも民にも、
そして信長の妹で自身の妻でもあるお市の方にも、
誰からでも慕われていた。信長も、長政のことを信用していた。
だが優柔不断な性格でもあった。討伐令によって、
織田との義と将軍の命令に挟まれ、長政が苦しむことが、
光秀にはわかっていた。そしてそれが許せなかった。
義昭は光秀をにらんで言った。
「光秀、御主は一体どちらの味方なのだ?!
将軍である私の家来か?!それともあのウツケの家来か?!」
光秀はそれを聞いて少し悩んだ。だが・・、
すぐに決意して義昭に言い放った。「私は信長様こそ、
天下を統べるに相応しきお方だと思われます!」
この一言に義昭は憤慨した。
「ならば好きなようにするがよい!もう御主など知らぬ!」
「ではそうさせていただく!」光秀は義昭の言葉を聞くと、
すぐに本国寺を飛び出して行った。
光秀と義昭は袂を分かった。
そして織田家の武将となるのである。
・・運命の時は、少しずつ近づいてきた・・。
(明智光秀 第六章に続く)





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