明智光秀 第三章

watanabe

九月、織田信長は足利義昭を奉戴し、上洛を開始した。
光秀も、その上洛軍の中にあった。上洛途上の六角氏らは
抵抗を試みるも、織田軍の猛攻に歯が立たない。
居城の観音寺城を陥落させられ、逆に滅亡に
追い込まれてしまった。織田軍は破竹の勢いで、
ついに京へ到達した。中央政治を牛耳っていた
三好の者たちは信長を恐れ、信長に臣従した。
ようやく義昭は、征夷大将軍となったのである。
義昭は信長に御礼の言葉を言った。「信長殿、
恩に着ますぞ。ようやくここまでたどり着いた。」
「いえ・・、この信長、世のために成すべきことを
成しただけでござる。」「この恩に報わなければなりませぬな。
どうですかな、信長殿。副将軍の地位につかれては。
私が推薦しましょう。」ここで副将軍の地位につけば、
信長は日本で高い地位を得るはずだった。
しかし信長は心の中で、(今の足利家の下についても、
意味はない。)と思っていた。もう足利将軍家を見限っていた。
そして副将軍の地位についても謝絶した。
その後の夜、光秀は義昭と喜びを分かちあった。
「義昭様、征夷大将軍任命、真におめでとうございます。
今までの苦労が報われましたな。」
「うむ。これも光秀、お主の働きあってのことじゃ。
礼を申すぞ。」「いえ、私は世のために成すべきことを
成したまでです。」信長と同じことを言った。
信長が持っていたような野心はなかったが。光秀も、義昭も、
苦労が報われお互いに笑顔であった。
・・・そしてまたお互いに、三好三人衆が再び義昭の命を
風下から狙っていたことに気付かぬのであった・・。
1569年1月、三好三人衆は、美濃浪人衆とともに、
義昭の御所である六条本国寺に攻撃を仕掛けた・・。
(明智光秀 第四章に続く)





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