歴史小説12

神代勝利殿からの投稿

山本勘助戦死・・・・の話

「信繁様・・・・ご最期に・・・・ござります・・・・」
従卒がそう伝えて戦場へ戻っていくと、勘助の心の中は誰にも想像できない
空しさだった・・・・
(この、勘助の武運も底に尽きたか・・・・)
鎧は、ぼろぼろになり、体から何箇所から血があふれていた。
(お館様・・・すいませぬ・・・!)
きつつき戦法が失敗した今、勘助には何も考えが浮かばなかった・・・・
・・・思えば、長い一生である。
今日のある寺で学び、諸国を放浪すること30年余・・・
仕官しても、ただ、その才能をねたまれ、最後には闇討ちされ、
この体になってしまった・・・・
だが・・・そんな自分を救ってくれたのは信玄様だった・・・
(この、もう衰えた体を地に埋めるしか、お館様に・・申し訳ない!)
力強く立ち上がった勘助は、隻眼ににらみをきかし、
低く、そして強い声を張り上げた。
「馬に乗れぃ!これより、信繁様を討った柿崎の軍勢を駆け抜け、
 謙信の本陣へ突撃とする。つづけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
馬のたて髪にしがみつき、腰につけた太刀を振り回し、先頭をきって敵陣に
斬り込んだ・・・・
「雑兵には目を向けるなっ!槍を伏せ、
突いて突いて大将を落とせぇぇぇぇぇ!」
しかし、たった2百の軍勢・・・それが、
黒い塊となり敵の本陣を斬り込んでいく。
勘助は・・・もう死んでいたかもしれない。
だが、感触はあった。
最初の方は感覚があったんだが、今はもう、激痛など感じない・・・
(お館・・・こんな自分をおゆるしあれ・・・・)

もうろうとする意識の中で、なおも勘助は太刀を振るった。
だが、全然力がこもっていなかった・・・・
その時、ひときわ大きい軍勢が勘助に接触したかと思うと・・・
誰かが掻ききったのか、
もう馬上には首の無い勘助の死体が放り出されていた・・





投稿本当にありがとうございました。

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